Hoshizo's Outdoor Life

塵も積もれば山となる

登山と熱中症

夏の暑い日の登山。皆さんは”熱中症”にかかったことはありますか?暑くて頭がボーっするけど、せっかく来た登山だし・・・と思って無理に歩みを進めると、取り返しがつかない事に成りかねません。そんな常に危険と隣り合わせの登山だからこそ、知っておきたい”登山と熱中症”について、実体験を踏まえつつ、その症状や対処法等をご紹介します。

実体験~山の日の悪夢~

2020年8月10日、この日は山の日で、毎年山に登りに行こうと決めていた日でした。夏真っ盛りということもあり、外に出るのも少し億劫になるような、朝から蒸し暑い日でした。

今日の目的地は金剛山。大阪市内から車で1時間30分くらいですが、起きるのが遅く、現地に着いたのはお昼前の11時位でした。車から降りると外は青空が広がり、素晴らしい自然とは裏腹に、熱気が体にまとわりついて来ます。

金剛山・登山入口の駐車場
金剛山・登山入口の駐車場

登る準備をします。この日の私の装備は以下の感じでした。

当日の装備
  • Tシャツのみ
  • ハーフパンツのみ
  • 水2本
  • おにぎりとパン1個ずつ
  • 汗拭きタオルが数枚
  • その他体を冷やすものは無し
  • とにかく暑かったため、レイヤリングは最低限のTシャツとパンツのみ。水はいつもの2本(500ml×2)。食料は途中のコンビニで買ったものが他にありましたが、朝ご飯をあまり食べずに出てきてしまったため、買って早々食べてしまい、残りわずか。加えて、体を拭いたり冷やせるものは、辛うじて前に使って残っていた汗拭きタオルが数枚の状態でした。

    しかし、この時の私は妙に過信していて、特に装備を意識することも無く登り始めたのでした。

    急登と猛烈な暑さ
    急登と猛烈な暑さ

    登り始めから急登が続きます。ここで私の悪い癖が出て、どうしても早歩きになってしまいます。本来、登り道に順応するために、最初はゆっくりと歩く必要がありますが、ペースを考えずに登ってしまう時があります。

    そして、気付いた時には全身汗でびっしょり。半袖、半ズボンで汗が大量に流れ出て、ものの10分~20分で大量の水分を失う形になってしまいました。

    少しペースダウンしたり休憩すれば大丈夫なのですが、この日はいつもと違うことに気付きます。体は重く、脈拍は上がったまま、一向に調子が戻る気配がありません。気付いた時には、肩で息をするようになり、一歩進むのがやっとの状態になっていました。

    休憩場所で完全にダウン
    休憩場所で完全にダウン

    持っていた水2本はあっという間に飲み干し、汗拭きタオルで首元等を冷やし、何とか少しずつ歩を進めますが、立っているだけで吐き気を催すようになり、ついにはその場に完全にへたり込んでしまうことになります。

    ここまで、登り始めること45分、距離にして1km少し登った所で、通過ポイントの国見城跡はまだまだ先、水分も完全に無くなり、かなりやばい状態になっていました。まさかものの数分でここまでなるとは想像もつきませんでした。

    登山には危険が付き物で、「危険な状況に置かれたら、引き返す勇気を持つこと」が重要であることは頭の片隅にありましたが、幸運にも今までそういった状況に置かれることが無かったので、初めてのショックと、熱中症の危険性を改めて肌で感じる瞬間となってしまいました。

    そして私は、登山で初めて頂上に立つこと無く、下山することを選択するのでした。

    癒しのひやしあめ
    癒しのひやしあめ

    下山後、一目散に飲み物を手にしたときは、本当に何物にも変え難い気持ちとなりました。

    熱中症の仕組み

    と、言った感じで、山の日の金剛山はまさに地獄の一日となってしまいました。短時間で色々なことが起こり、記憶が曖昧な所もありますが、ざっと振り返ると、症状としては下記の通りです。

    当日の症状
  • 汗が大量に出る
  • 常に暑く、体温が下がらない
  • 体が重く、思ったように動けない
  • めまい、吐き気がする
  • 特に、登り始めから尋常では無い汗の量でした。また、体に熱を持った感じが続き、めまいが起きるなど、徐々に体調は悪化していきました。

    熱中症の仕組み
    熱中症の仕組み

    熱中症の基本的な仕組みとしては、上の図のように、体内要素のバランスが崩れることで発生します。人間は体を動かすと熱を発生させ、体温が上昇します。この時、全身の皮膚に血液を多く送り込んだり、汗を出したりすることで、体内の熱を外に逃がそうと体が働きかけますが、体温の上昇が急激であったり、高温状態が長く続くと調整が追い付かなくなり、バランスが崩れ、その弊害として様々な症状が発生します。これが熱中症です。

    主な症状と原因
      原因 症状
    発汗 水分・塩分バランスの崩れ 手足のけいれん・おう吐
    皮膚へ血液を集める 血液バランスの崩れ 頭痛・めまい

    汗は血液から作られますが、発汗して水分を放出すると同時に塩分要素(ナトリウム)も多く失われます。水分の不足は脱水症状(おう吐 等)に、塩分は筋肉の動きを調整する役目を持っており、不足するとけいれんを引き起こすきっかけになります。

    また、体内中の血液が皮膚(体の表面)に集中することで、低血圧になったり、脳への血液が一時的に不足するとことで頭痛・めまいを生み出します。

    と、上述の熱中症の仕組みから改めて当日の私の行動などを振返ると、30度を超える高温の中、急登をペースも考えずいきなり駆け上がり、半袖半パンで大量に汗をかいた挙句、水(ただの水)はすぐに底をつき、体を冷やすものも汗拭きタオル数枚のみ・・・。

    体温コントロールなど出来るはずも無く、熱中症になる要素しかない・・・ということが分かりました(;- Д -)/。

    熱中症にかかったら

    でも、実際登山中に体調が悪くなっても、中々冷静に判断が出来なくなります。私の場合も、”少し休めば回復するのではないか…”、”せっかく来たのだから頑張ろう…”と、頑張ってしまいました。特に歩き始めて中盤以降、もう少しで頂上に着くことが分かっている場合は、どうしても無理しがちになると思います。

    これは私が実際に体験して身に染みて分かったことなのですが、少しの判断ミスが命取りになること。今回は少しの距離で済みましたが、無理して登れば、それだけ降りる距離も増えるということ。もし、もう少し無理して登ってしまっていたら、下り切る前に力尽きて・・・、と最悪のケースになっていたかもしれません。特に今回のように、自分一人だけの行動の場合、自分の意思決定だけが全てになるので、より瞬時の判断が重要になってきます。

    では、実際に登山中に熱中症にかかったらどうすればよいのでしょうか。

    処置と具体例
      具体例
    涼しい場所へ移動 木陰、屋根のある場所(休憩所、小屋等)
    水分・塩分を摂る ミネラルウォーター、スポーツドリンク、川の水等
    体温を下げる レイヤリングを薄くして熱を放出

    まず、とにかく考えないといけないのは、体温の調整をおこなえる状態にすること。山道で森林の中を歩いている場合は、極力木陰のある所に、開けた場所にいる場合は屋根のある休憩所などを探して、なるべく直射日光の当たらない場所に移動しましょう。

    次に汗で失われた水分と塩分を補給します。理想はやはりスポーツドリンクですが、普通の水でもまずは十分だと思います。手持ちの水が無い場合は、川の水でも良いと思いますが、近くに無い場合は汲みに移動するリスクや、衛生面を考えるとあまりおススメできないので、最悪のケースとして想定しておきます。

    最後に、体内の熱を放出するためにレイヤリング(重ね着)を調整します。この時、Tシャツ・半パンのみ等、肌の露出が多すぎると日光を直接受け、暑さと共に汗が出過ぎる場合あります。枚数は減らしてもベースレイヤーは着たままにするなど、必要以上に水分を失わないように心掛けましょう。

    熱中症の予防・体調管理

    熱中症の仕組みと対処法を振り返ると、私の場合はそもそも装備や心構えが甘かったことが分かります。ただ、いくら装備を充実させたとしても体調の変化だけは、当日にならないと分からない部分が多いと思います。
    それでは、予め熱中症の予防に繋がる様な、日頃の体調管理としてはどういったことを意識すれば良いのでしょうか。

    <暑さへの耐性を作る>

    徐々に暑さへ耐性が付いていくこと、これを”暑熱順化“と言いますが、普段から体温の調整を意識した行動を取り入れます。例えば、

    • 定期的に運動(ランニング等)をおこなう
    • 半身浴をおこなう
    • サウナで汗を流す

    等です。
    体温の上昇、それに伴って汗を流す機会を増やすことで、身体の反応が機敏になり、暑さへの耐性ができ、熱中症になりにくくなります。これはある程度の期間(1、2週間)を持っておこなう事で効果が生まれるようです。季節的には、本格的な夏が来る少し前(梅雨の時期)から取り組むようにしましょう。

    <体重のチェック>

    身体の成分は60%が水と言われているように、非常に多くの割合を水分が占めています。体重が減少し、減った分が全て水分の場合、2%減少で要注意、3%減少で脱水症状となります。運動等で汗を流す場合は、その前後で体重を測定し、どれくらい変化があるかをチェックします。そして、減った分を水分補給によって補います。

    こまめにチェックしておけば、いざ登山をする際にどれくらいの水分を確保しておけば良いかの目安になりますね。

    <規則正しい生活を>

    そしてやはり重要なのは、正しい食事や十分な睡眠など、生活習慣の部分になると思います。いくら暑さへの備えをしたところで、食生活が乱れたり十分に睡眠が取れていないと、十分な効果は発揮出来ないでしょう。

    実際私も、登山前日は準備やらで寝るのが遅くなったり、朝の食事も適当に摂ってしまったりと、体調を整える準備が疎かになってしまっていたと思います。

    暑さ対策 + 生活習慣を整え体調管理することが熱中症予防へと繋がりそうですね。

    熱中症の予防・登山時の備え

    ここまで、熱中症の具体的な症状や対処方法を説明して来ました。最後に登山当日にあると良い食べ物・飲み物、装備などをご紹介します。

    〇食べ物

    登山時の発汗で失われやすいのはやはり塩分(ナトリウム)。大量の汗と同時に失われる塩分を簡単に補える塩タブレット系がおススメです。塩分だけでなく、疲労回復に効果があるクエン酸、筋肉の働きを正常に保つために必要なミネラルを多く含むカリウムなど、色々な栄養を一度に摂れるものも良いですね。

    塩分を多く含んだ登山にピッタリなチョコレートなんてものもあります。別記事で紹介していますので是非参考にして見てください。

    やまチョコ

    あと、私的に良かったなと思うのが梅干し。あの酸っぱさが登山で疲れた身体には心地よく、精神的に楽にしてくれます。日本人ならではですね。すっぱさの源のクエン酸はもちろん、ミネラルも豊富に入っています。

    〇飲み物

    これはほぼ一択で、スポーツドリンクがベストです。水分と塩分等が同時に摂取できること、バランスを考えて調合されているので、色々とものを持って行って装備の重さが増えることを考えると、これ一本で十分だと思います。

    それでも、市販のものだと甘味を持たせたものが殆どなので、糖分が気になる方は、ミネラルウォーターと他に塩分等を摂れる食べ物を組み合わせることでカバーが可能です。

    〇装備

    服装の観点で言うと、”いかに体温をコントロールできるか”になりますが、これはアンダーウェア(肌着)を着ることが一番かなと思います。肌の露出が高いと、日を直接浴びる面積が増え、熱を吸収しやすくなります。また、肌に汗が残り続けることで、熱がこもりやすくなり、体温上昇に繋がってしまいます。

    そんな問題を解決するのが、通気性の良いアンダーウェア(スポーツタイツと呼ばれるもの)です。直射日光を避け、程よく汗を吸収・放出、肌から汗を逃がすことで熱がこもりにくくなり、体温のコントロールがし易くなります。

    夏の暑い日に、全身タイツ・・・といかにも暑苦しいイメージが以前はあり、避けがちでしたが、体温調整の仕組みを理解すると、”なるほど!”となるギアなので、みなさんも是非一度試してみて下さい。

    まとめ

    甘く見ていた夏の登山。一歩間違えれば最悪のケースにも成りかねない事を、身を持って経験することで知ることが出来ました。熱中症というテーマを通して、身体の仕組みや、どうすれば防げるのかを考えてきましたが、如何だったでしょうか。全てを意識して取り組むことは難しいかもしれませんが、少しでも登山を快適に過ごすための参考になれば幸いです。

    それでは、良き登山ライフをお過ごしください!\(;- Д -)/ HOT!

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    テーマの著者 Anders Norén