Hoshizo's Outdoor Life

塵も積もれば山となる

山と食欲と私

“山と食欲と私”は、信濃川日出雄先生著の”山とごはん”をメインテーマとした登山漫画です。主人公の27歳・日比野鮎美を軸とした個性豊かなキャラクターが登場し、ストーリーを盛り上げると共に、彼らとの触れ合いによる鮎美ちゃんの心情や成長が描かれているのも大きな魅力です。

また、ごはんだけで無く、道具の紹介であったり、実在する山に登ったりと、登山をかじったことがある人なら、随所に興味を惹かれる描写が散りばめられています。

そんな魅力いっぱい、おなかいっぱいの”山と食欲と私”を独自の目線でご紹介します。

キャラクター紹介

日比野鮎美

日比野鮎美

出典:山と食欲と私 13巻 145話

今作の主人公で、山でのごはんをこよなく愛する”単独登山女子”。
姫毛が特徴。
防犯設備関係の会社で経理を担当している。
毎回色々な山へ向かっており、北は北海道、南は九州までと、
幅広く活動。体力は無いようだが、テント泊や長距離の縦走も
こなすなど、かなりアクティブな印象。

小松原鯉子

小松原鯉子

出典:山と食欲と私 14巻 148話

鮎美の会社の同僚で先輩。
関西弁が特徴。
普段は明るい性格だが、時折陰険な表情を見せる一面あり。
特に色恋沙汰には敏感で、婚活に奔走中。
鮎美に誘われてから登山に行くようになる。

瀧サヨリ

鮎美の会社の派遣社員で後輩。
基本無口が特徴。
一見地味だが、学生時代は山岳部に所属し、山の知識は豊富。
山で出会った瀧本健次郎と結婚、後に長野に移住するが、
鮎美とは連絡を取り合う仲を続けている。

猪口いるか

鮎美の母親。苗字が違うのは再婚しているため(前夫とは死別)。
桜でんぶのお弁当が特徴。
再婚相手の猪口雅敏と共に週末に新潟で生活している。
鮎美とはたまに登山に出かけるが、鮎美よりも
健脚ぶりを披露することも。

鷹桑秀平

家電メーカーに勤務する35歳。
形から入るのが特徴。
登山は初心者で、知識が足りず失敗することもしばしば。
山では鮎美に目を付けられることはあるが、互いの面識は無い。

黒蓮七実

職業不明で日本中を放浪している。
“何とかなる”が特徴。
無計画に行動することが多く、
奈良の山奥に自分で家を建てたり、
目的地も決めずに突っ走ったりと
破天荒ぶりを発揮。鮎美も被害を受けているが、
時折発する言葉に何故か惹きつけられる魅力がある。

山ごはんベスト5

タイトルからも分かるように、何といってもこの漫画の醍醐味は、登場する数々の山ごはんにあります。メインは主人公の鮎美ちゃんが山中で披露することになるのですが、簡単なものから手の込んだものまで、そのバリエーションは豊富です。中には思わず作ってみたくなるものあり、見ているだけでお腹が空いてきてしまいますね・・・。

ここでは作中で出てきた山ごはんのうち、私が特に食べてみたい!作ってみたい!と思った5品をご紹介します。もちろん、ここで紹介できない数多くの山ごはんたちも登場するので(ほぼ1話ずつ登場します)、興味がある方は漫画をチェックしてみて下さい。

めんたいツナ缶の炊き込みご飯(13巻・113話)

めんたいツナの炊き込みご飯

出典:山と食欲と私 13巻 113話

もう名前からして美味しそうな一品。鮎美ちゃんが九州の山を訪れた際に、山小屋でおすそ分けで貰ったツナ缶で炊き込んだご飯なのですが、九州名物のめんたいこが混ざっていてこれがまた食欲をそそるんですよね・・・。

で、調べるとこのツナ缶は実在するようで、何百万缶の売り上げを誇る人気商品のようです。ツナ缶を入れて炊き込むだけなので簡単に作れて、美味しいとあれば山ごはんにはうってつけ。是非一度は作ってみたい一品です。

すりおろし梨ソーダ(13巻・145話)

奥多摩の御前山を訪れた際に登場するすりおろし梨ソーダ。(山ごはんでは無いのですが)すりおろした梨と砂糖、ソーダを組み合わせた、こちらもシンプルながらに清涼感いっぱいの飲み物です。暑い季節の登山で、疲れた身体を癒してくれること間違いなしでしょう。

まるごとトマトのジャンバラヤ(3巻・24話)

会社の同僚・小松原さんと始めて登山した時に鮎美ちゃんが作った山ごはん。トマトを丸ごと一つ、身をくり抜いた中にとりにくや野菜を詰め込んだものと、スパイスを加えたお米、チキンを一緒に炊いたボリューム満点の一品。その素材一つ一つを想像するだけで食欲がそそられ、見た目のインパクトも大。・・・ただ食材の多さや調理の手間を考えると、下ごしらえは必須です。

自家製ピーナッツ味噌のおにぎり(7巻・75話)

瀧本夫妻と、山へ向かう道中の車内で鮎美ちゃんが食べていたおにぎり。落花生と、甘く味付けした味噌を混ぜた、美味しさがにじみ出るシンプルな山ごはんです。手軽に作れて栄養(炭水化物)も採れるおにぎりの具としては重宝しそうですね。いつもの味に飽きた時に、ちょっとしたアクセントに取り入れたい一品です。

ぽんかす丼(2巻・16話)

お米に天かす・ねぎをのせ、味ぽんをかけて炊いた、これまたシンプルながらサッパリさが魅力の山ごはん。鮎美ちゃんが山ごはんを作る際に、食材の長期保存にポイントを当てて考案したメニューです。確かに長時間の山行となると、持っていく食材の新鮮さは気になる所で、状態を気にしなくて済む乾物を上手く取り入れた、登山にもってこいの一品です。また、漫画の描写では流行りのメスティンを使っていて、山ごはんチャレンジの意欲を引き立てています。

鮎美ちゃんが登った山一覧

ここでは、作中で鮎美ちゃんが実際に登った山※を地図にマッピングして一覧化してみました。

こうやって見てみると、鮎美ちゃんが住んでいる関東付近の山が多く、続けて多いのは人気の山が連なる日本アルプスというのが分かります。作中では縦走することも多いので、一か所に集中している場所も伺えます。

逆に本州の中心近辺を離れると数は少なく、ポツポツといった感じ。一応、北は北海道から南は九州まで訪れていますが、中国地方など訪れていない場所も多いので、これからの展開で登山することがあるのか楽しみですね。

これを機に聖地巡礼の旅をしてみるのも良いかもしれません(コンプはかなり大変ですが・・・)。

〇実は一番多いのが・・・

ここでマッピングしている山は、作中に実際に山の名前が明記されているものを抽出しているのですが、実は一番登場が多いのは”とある山”(か、それに近しい言葉のもの)。これがどこの山かを特定するのがとても難しく、一応描かれている山の風景や、その他標識や像などで判断出来るものもあるのですが、その殆どが特定できず・・・。

なので、全ての山が特定できればマップももっと充実できるのですが、私では力及ばず(悲)。
お願いだ鮎美ちゃん、山に行くときはちゃんと場所をキチンと伝えてから出かけてくれ!(心の叫び)

・・・ということで、上記に載っていない山で、あれはここの山だよ!と分かった優しいハイカーさんは是非コメントで教えてください!

名セリフ集

その美しい自然の描画や、食欲をそそる山ごはんの数々はもちろんですが、ストーリーを盛り上げるキャラクターが発する一つ一つのセリフにも魅力が詰まっているのが"山と食欲と私"。何気なく発しているつもりでも深い意味を持っていたり、心に刺さったりと、考えさせられる言葉が辺りに散りばめられています。

山や自然にまつわる言葉も多いので、きっと山好きにはバイブルになること間違いなし。ここでは、私が特に心に残っている名セリフをピックアップしてご紹介します。

「行きたい」

その言葉が私にはお願いに聞こえるんだよ

「〇〇」しよう

って言わない

「〇〇したい」

やりたいことがあるなら自分も背負えよ

出典:山と食欲と私 13巻 140話 海苔野 浜絵のセリフ

鮎美が山ガール時代に、大学の友人・海苔野 浜絵と登山に行ったときの浜絵のひとこと。
友人グループで遊んだり、何かをする時に計画するのはいつも浜絵であって、鮎美が自ら提案したり、考えたりしないことに嫌気が差して出たセリフ。

これをきっかけに鮎美は自分の意志を持つ大切さに気付かされるのですが、自分にも刺さる所があり、印象に残る言葉です。

この後、浜絵とは和解するのですが、鮎美ちゃんの成長の過程が垣間見える重要なワンシーンになっています。

私も残しておこう

胸ときめいたこの瞬間を

鮎美はここにいたんだよって

出典:山と食欲と私 10巻 114話 日比野 鮎美のセリフ

鮎美が幼くして死別した父・透が学生時代に行った旅先に、残された古い写真を元に訪れることに。

早くして失ったことで、想像の中で生きる父が、どんな人物で、どんな想いで生きていたのかを、その旅路で少しずつ感じ取っていく、趣深いストーリーとなっています。

おぼろげだった父が少し具現化し、その存在を自分に重ね合わせることで、改めて自らの存在を再確認するための、そんなセリフに聞こえてなりませんでした。

人生の一瞬、一瞬を大切に生き、何かを残す気持ちにさせる、心に留めておきたい言葉です。

その答えをくれたのは

山でした

出典:山と食欲と私 7巻 79話 瀧本 サヨリ

鮎美の会社で働いているサヨリが、友人と登った山で、想いとして発せられた一言。

結婚を機に、長野に移住するかを悩んでいたと思われるサヨリが決意した瞬間として描かれています。

やはり、"山"の漫画であり、山は人の心を素直にさせる、素晴らしい場所であると思わせてくれる王道の言葉になっています。

本の紹介

〇単行本

単行本はコミック版、電子書籍版共に絶賛発売中。
(2023年1月現在 1巻~16巻まで)
また、WEBマンガサイトのくらげバンチでは、第1話と最新の数話が無料で公開中ですので、興味がある方は是非試し読みしてみて下さい。

〇レシピ本

本編中に出てくる山ごはんを再現したレシピ本も出ています。作中の描写だけでも十分においしそうな山ごはんですが、実際に作ってみれば、より山と食欲と私を楽しめること間違いなしです。(まだ実現は出来ていませんが・・・)
作中に登場した山に行って、その山で食べたごはんを実際に再現するのが目標です(願)

コラボグッズ・イベントの紹介

登山に関連する道具はもちろん、"食欲"が示す通り、食品とのコラボもあり、山と食欲と私のファンの方はもちろん、そうでない方もその魅力に触れることが出来る機会が盛りだくさんです。

〇コラボグッズ

アウトドアメーカーのテンマクデザインとコラボした、ステンレス製のシェラカップです。カップの底にオリジナルデザインの絵柄が刻印されており、さりげないオシャレが好評の一品です。

山と高原地図とコラボした、山と食欲と私がパッケージの表紙を飾る地図も販売中。地域は茨城県の山々で、百名山としても有名な筑波山などが記載されています。実は私の故郷が茨城なので、山と食欲と私ファンとしてはたまりません(笑)。地図は通常の高原地図と変わりませんが、パッケージ裏表が変わっていたり、中に記載されているQRコードを読み込むと、作者のインタビューが読めたりするので、興味がある方は是非。これをきっかけに紙の地図を片手に登山も良いかもしれませんね。

〇コラボイベント

東京は日本橋にあるREWILD OUTDOOR TOKYOさんでは、山と食欲と私とコラボした"山ごはんCafe"を展開。作中で登場する山ごはんを再現したメニューやオリジナルのスムージーなど、どれも一度は味わってみたい魅力の品々。それ以外にも、山ごはんcafeオリジナルアイテムも販売されているようです。

元々アウトドアをテーマとしたカフェとなっており、一面が自然をモチーフとしたディスプレイで彩られており、椅子やテーブルなどもキャンプ道具が使われており、アウトドア好きにはたまらないスペースとなっています。

また、コラボ期間中は原画等も展示されており、ファンにはたまらないイベントとなっています。
やはり人気もあってか、開催期間も延長された※ようですので、興味がある方は是非立ち寄ってみては如何でしょうか。
※現在は終了しています(2023年1月11日現在)。

残念ながら東京での開催のみらしいので、これからは地方など色々な場所でこういったイベントが開催されると嬉しいですね。

・関連リンク
山と食欲と私 × REWILD OUTDOOR TOKYO「山ごはんカフェ」

まとめ

ここまで"山と食欲と私"の魅力をお伝えしてきました。
登山が好きな方はもちろん、美味しいごはんに興味がある方も
是非一度読んでみて下さい。もちろん登場するキャラクターも個性的、
それぞれが発する言葉もきっと心に来るものがあることでしょう。
週末は山と食欲と私を片手に山頂で山ごはん、なんてのもオツかもしれませんね。

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テーマの著者 Anders Norén